キャリアデザインとは、自分の人生や仕事における将来の目指す姿や目標を、自分自身で主体的に設計していく考え方を指します。企業内での昇進や昇給といったキャリアパスを目的とするのではなく、社内に限定されずに将来どのような仕事や働き方をするかを重視することがポイントです。
また、キャリアデザインは、自己の職業人生を主体的に設計し、実現するためのプロセスでもあります。終身雇用や年功序列制度が終焉を迎えつつある現代において、成果主義や中途人材の登用が一般的になり、キャリア形成やライフスタイルを会社に委ねるのではなく、自分で実現する「自律型人材」が求められています。
キャリアデザインを実現するためには、まず自己理解を深めることが重要です。知識・スキル、行動特性、仕事に対する価値観、周囲に期待されていること、目標やありたい姿などを洗い出し、自己理解を深めた上で、目標やありたい姿になるためにどのようなキャリアを築くべきなのかを明確にしていきます。これにより、価値観やライフスタイルを含め、自分らしく働くために必要な職業を選択することが可能になります。
キャリアデザインは他の用語と混同されやすいですが、それぞれ異なる意味を持っています。ここではキャリアパス、キャリアプラン、キャリア形成との違いについて解説します。
キャリアパスは、企業内での昇進や目標とするポジションを目指すことを指します。例えば「3年以内に係長に昇進する」「企画開発部門でプロダクト開発に携わる」といった具体的な社内の目標設定がキャリアパスです。一方、キャリアデザインは、企業内での昇進にこだわらず、将来どのような仕事をするかを自分自身で設計することに重点を置きます。企業内に限定されず、より広い視野でキャリアを考えるのがキャリアデザインです。
キャリアプランとは、将来やりたい仕事や理想の働き方を具体的にプランニングすることを指します。例えば転職や独立など、職業のみの行動計画を立てることがキャリアプランです。これに対し、キャリアデザインは、職業のみならずプライベートを含めた理想の人生を送るための行動計画です。仕事だけでなく、生活全体を考慮した設計が求められます。
キャリア形成は、自分のビジネスキャリアや目的を計画し、その計画に対して知識やスキルを得て課題を克服しながら経験を積む活動を指します。キャリア形成は、具体的なスキルや知識の獲得に焦点を当てていますが、キャリアデザインは、そのキャリア形成のためにどのような人生を送るべきかを全体的に設計することに焦点を当てています。
キャリアデザインを行うことには、従業員個人だけでなく企業にも多くのメリットがあります。ここでは、キャリアデザインの主な目的について解説します。
キャリアデザインを設計することにより、自分の目標とするキャリアや人生についての自己実現の目的が明確化されます。自己実現のための目指す姿が決まっていれば、異動や転勤などの意図しない偶発的な出来事があっても前向きに捉えることができます。自己理解を深め、自分らしい働き方やありたい姿を描くことで、変化をポジティブなチャンスとして受け入れる力が養われます。
キャリアデザインを行うことで、自分の将来の目指す姿が決まり、その実現のための行動が明確化されます。具体的には、以下のような点が明確になります。
このように、将来のビジョンから逆算して行動計画を立てることで、今の自分の行動が自己実現に直結していると感じられ、モチベーションを高く保つことができます。
キャリアデザインの重要性を理解し、推奨している企業は、高い成果をあげる人材や価値の高い従業員が多い傾向にあります。従業員がキャリアデザインを意識することで、現在の働き方が自分のキャリア形成に合っているかを再考する機会となり、その結果、企業価値も高まります。これにより、優秀な人材の採用や確保につながりやすくなります。
キャリアデザインの一つの目的は、自分らしい働き方の「軸」を見つけ、自己実現を図ることです。単に会社内でのキャリアアップを目指すのではなく、自己理解を深め、自分のありたい姿や理想の働き方からキャリアを考えることで、自己実現のための基盤を築きます。この「軸」があることで、偶発的なキャリアの変化もチャンスと捉え、前向きに取り組むことができるようになります。
キャリアデザインが現代において必要とされる理由は、企業、社会、そして個人の変化に深く関係しています。ここでは、その理由を具体的に解説します。
経済の急激な変化やグローバル化により、将来の見通しが難しい「VUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)の時代」に突入しました。バブル崩壊以降、終身雇用制度の崩壊とともに、働き方や労働に対する価値観が多様化しています。人生100年時代を迎え、長期にわたるキャリア設計が必要になり、個人が自らのライフコースを見直すことが重要となっているのです。
企業の雇用慣行も大きく変わり、年功序列から成果主義へと移行しました。即戦力となる中途人材の採用が増え、人材の流動性が高まっています。企業は従業員のモチベーションやエンゲージメントを向上させるために、キャリアデザインの支援を行うことが必要です。従業員が自分のキャリアを主体的に設計することで、企業としても高い成果を上げる人材を確保しやすくなります。
働き方や労働への価値観が多様化し、自ら考え主体的に行動する「自律型人材」が求められるようになりました。転職が当たり前の時代となり、自己実現のために「なぜ働くのか」「どう働くのか」を見直す必要があります。キャリアデザインを通じて、自分のありたい姿や理想の働き方を明確にし、それを実現するための行動計画を立てることが重要です。
DX化の推進やテレワークの普及、働き方改革の進展により、労働に対する価値観が多様化しています。ライフワークバランスや場所に縛られない働き方など、従来の働き方に囚われずに自分らしい働き方を追求する動きが加速しています。そのため、社員一人一人が主体的にキャリアを設計し、行動することが求められています。
企業が求めるスキルや人材像も変化しており、より専門的なスキルを持つ人材や主体性のある人材が重視されるようになっています。社員が自ら必要なスキルや知識を明確にし、目標を設定して行動することで、企業にとって価値の高い人材となることができます。
成果主義の企業や中途採用を行う企業が増え、労働者側もキャリアアップや給与アップを求めて転職するケースが増えています。これに伴い、社員自身がキャリアビジョンを明確にし、適切な職場を選ぶことが重要になっています。企業もキャリアデザインの支援を通じて、社員の離職防止やモチベーション向上に努める必要があります。
キャリアデザインの方法は、自己理解を深め、将来の目標を明確にし、具体的な行動計画を立てるプロセスです。以下に、キャリアデザインの具体的なステップについて解説します。
まず、自分自身の現状を把握することから始めます。これには、自分の持っているスキル、強みや弱み、過去の業務経験、取得した資格やスキル、そして業務において感じたやりがいや嫌な思いなどを振り返ることが含まれます。自己分析を深めるためには、心理テストや適性検査などの診断ツールを活用することも有効です。
現状把握や過去の振り返りを基に、自分の将来像やありたい姿を考えます。ここで重要なのは、自分らしさを大切にし、自分がどのようなキャリアを歩みたいのかを具体的に描くことです。勝ち負けではなく、自己実現のための理想像を明確にします。
次に、現状のスキルや強みと、ありたい姿とのギャップを洗い出します。また、自己分析だけでなく、上司や同僚からのフィードバックをもらうことで、自分を客観的に見ることができます。これにより、ギャップを埋めるための具体的な課題が明確になります。
ありたい姿や将来像が描けたら、その目標に到達するまでのキャリアの段階を考えます。具体的にどのような業務を経験し、どのスキルを習得する必要があるのかを明確にします。これにより、ステップごとの目標設定が可能になります。
キャリアの段階を考えたら、それらの目標を達成するための具体的なアクションプランを作成します。将来のありたい姿や目標だけではなく、それを実現するための具体的な行動を計画します。実際に動き出すためのステップを細かく設定することが大切です。
企業が従業員のキャリアデザイン構築を支援することは、企業自体の成長にもつながります。ここでは、企業がキャリアデザインを支援するためにできる具体的な方法について解説します。
キャリアデザインに関する集合研修を実施することは、従業員同士のフィードバックを促進し、自己理解を深める効果があります。研修を通じて、自分自身が気づけなかった強みや改善点を客観的に見つけることができます。特に新卒や若手社員に対しては、キャリアデザインの重要性を理解させ、自社のマインドセットを形成する機会となります。
企業内にキャリアコンサルタントを配置することで、従業員がキャリアについて相談できる環境を整えます。キャリアコンサルタントは、従業員が仕事やキャリアデザイン、育休・産休からの復帰支援、転職支援などについて相談できる専門家です。企業と利害関係のない第三者としての立場から、従業員が相談しにくいことも気軽に話せる環境を提供します。
キャリア面談は、企業内の上司や人事担当者が従業員と将来のキャリアについて話し合う場です。面談を通じて、従業員が自分自身でキャリアの気づきを得ることを促します。また、キャリアステージの確認や目標の明確化にも役立ちます。定期的なキャリア面談を行うことで、従業員のモチベーションアップとキャリアデザインの促進が期待できます。
従業員の目標設定を定期的に再検討することも重要です。キャリア面談やフィードバックを基に、従業員のキャリアステージに合わせた目標設定を行います。目標が達成されたかどうかを確認し、必要に応じて目標の見直しや再設定を行うことで、従業員のモチベーションを維持し、キャリアデザインの実現をサポートします。
企業がキャリアデザイン支援を行うことには、多くのメリットがあります。
従業員が自分のキャリアを主体的に考え、行動することで、仕事に対する取り組みが積極的になります。これにより、従業員のモチベーションやエンゲージメントが向上し、生産性の向上にもつながります。
キャリアデザイン支援を行うことで、若手社員が将来のキャリアパスを見据えて仕事に取り組むことができます。これにより、若手社員の離職防止や定着につながり、優秀な人材を長期間確保することができます。
キャリアデザイン研修を通じて、社員が自らのキャリアを設計する力を養うことで、企業全体の人材力が向上します。社員一人ひとりが目標を持ち、主体的にスキルアップを図ることで、企業の競争力が高まります。
企業が従業員のキャリアデザインを支援するために、以下の施策を導入することが効果的です。
企業が従業員のキャリアデザインを支援することは、従業員のモチベーション向上や離職防止、企業の競争力強化につながります。研修や面談、目標管理制度などの具体的な施策を通じて、従業員のキャリアデザインをサポートし、企業と従業員の双方にとっての成長を実現しましょう。
本メディアではミドル・シニア向けにキャリア研修を実施している会社の中から課題別におすすめの研修会社を紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
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